「リューン〜風の魔法と滅びの剣〜」レポ
なにわ男子の大橋和也くん、藤原丈一郎くんがW主演を務める『リューン〜風の魔法と滅びの剣〜』の再演が、先日遂に千秋楽を迎えました!
初演を観ることができなかった私にとって、今回は再演ですが初めてのリューンだった。ようやくあのリューンの世界に行ける!と本当に楽しみにしていて。
なので、比較してどうこうという話はできないけど、逆に初めて観たからこそ思ったこと、素直な感想をバーッと書こうと思う。
もうとにかくすんばらしくて書きたいことがたっくさんあるのですが、ストーリーに沿ってキャラクターについてなど素直に思った感想を書いていこう〜!
まずあらすじ。
幼なじみのリューン・フローとリューン・ダイ。ふたりともに15歳。リューン・フローは一角狼座の芸人、リューン・ダイは戦士の修行中。ふたりはまるで兄弟のように仲が良い。
10年前のあの戦争で両親を失った。
ある日、ふたりは伝説の「滅びの剣」を見つけてしまう。それによってリューン・フローとリューン・ダイの運命の歯車が狂い出す。
「滅びの剣」を手に入れようと軍勢を率いて現れた大国の長・ダナトリアは、村を焼き払おうとする。
リューン・ダイはその剣を手にし、 敵も味方も関係なく皆殺しにして消えてしまう。
失意のリューン・フローは、 友であるリューン・ダイを殺すための旅に出る・・・
まず、幕が上がって最初のシーンからこのリューンの世界観にグググッと引き込まれました。
舞台の真ん中にダイとフローがいて、その周りを白い格好をした不思議な人たちが囲んでいて、光がポワポワ浮いていて。ダイとフローは、スローモーションの動きと絶妙な表情で異空間に迷い込んだよう。
「調和のシンフォニー」という曲で、一番最初に聴いたはずなのに終演後も頭に残っているほど、澄んだ空気を感じるような独特の世界観を演出していた。
そのあとのダイとフローが歌う「僕たちの魔法」はとにかく圧巻。脱帽です。
ダイの伸びやかでまっすぐなハイトーンボイスと、フローのダイの歌声を支えるような低音の綺麗なハーモニーが会場に響き渡って。そこでもうブワワッて身体中痺れた。
今でも頭の中でずっとダイとフローが「僕たちの魔法」を歌ってる。離れない。終演後もずっと口ずさんでた。
一幕は基本的に平和なルトフの里の様子が描かれていて、笑える部分もたくさんあって楽しかった。その地域によって、その公演によって、いろいろ変えていて舞台の醍醐味だな〜と。
特に大澄賢也さん演じる、ウィルトスが金金言うなよ〜の流れで「今日もこんなにたくさんの俺のファンが来てくれて」みたいなことを言って、「なんだこのシーンとした空気は?なにわの丈とはっすんのファンか?なにわ男子には負けてられねえ〜!」(ニュアンス)ってなにわ男子の名前出してくださって嬉しかったし、会場は笑いに包まれてた。
あと、ちょっとシーンは飛ぶけど、剣を見つけるためにダイフローエルカの3人で声を合わせて言うところで、ファンルンが「じゃあ俺合図係やる!」って言って「いっせーのせぇぇ」とくせ強めの合図をすると、それを盛大に無視してフローの「せーのっ」に合わせて声を合わせる3人が可愛かったし面白かった〜
ルトフの里の一番最初のシーンで、ダイス先生のことをダイが「おまえ」って呼んじゃって怒られて、「ダ!イ!ス!せ!ん!せ!い!」って座っているダイス先生の肩に手を置いて左右から顔を出して言っていたのも可愛かった〜
私の入った公演では、かまど亭のシーンで、ダイとエルカがジャンケンをしてて、たしかダイがパーでエルカがチョキでダイが負けてた(笑)でもダイがエルカの持っているパンを選んで貰ってたな〜美味しそうにもぐもぐしてて可愛かった!
天真爛漫なダイの魅力が出ていてとっても愛らしかった。
体育会系で元気なダイ、優しいけど芯は強いフロー、活発でおてんばなエルカの3人が、兄弟みたいに仲良しでとっても可愛い。
話全然違うけど、この3人がメインの恋愛ドラマやってほしい。ちなみにフローがエルカのことが好きで、エルカはダイのことが好きで、ダイは振り向かないっていう三角関係。そんでもって当て馬役で不憫なフローだけど、ダイはどこかに行ってしまって悲しむエルカのそばにいて支えてあげてほしい。個人的にフローには幸せになってほしいので、最後はフローとエルカが結ばれてほしい……
メインストーリーじゃないけど絶対フローはエルカのこと好きだしエルカはダイのこと好きだと思うなあ。
このあと残虐な展開が待っているとは思いもしない、平和で穏やかなルトフの里だけど、ダイとフローは、幼い頃戦争で故郷も家族も仲間も失った悲しみや憎しみを抱えていた。
「血塗られた記憶」っていう曲がまたすごい。歌詞が生々しくて、家族が殺されていくところをダイとフローは5歳という幼さで目にしてしまうその時の様子が目に浮かんで。
魔法があれば里は守れた、と魔法を信じているフロー。自分にもっと力があれば守れた、と強くなりたいと思うダイ。
そんなダイは剣の稽古をしていて、フローはダイに「本物の剣は人を殺すものだよ、忘れないで。」と言う。
「大丈夫。俺にはお前がいる。もし俺が道を誤ったときはお前が俺を救ってくれる。そうだろ?」
というダイの言葉にフローは、
「うん、約束する。この身を呈してでも。」
と力強く答える。
まさかこの約束があんな大きなことになるなんてね、いやダイはいつかそういう時が来ると察していたのかな。
そして遂に滅びの剣を見つけてしまう。
そういえば剣を見つけたときファンルンいたな。探してて研究に使おうと思って…とか言ってたけどあれ全部分かった今思い返すと、めちゃくちゃ怪しい。全然疑ってなかった。
エルカが最初滅びの剣を持ってしまうんだけど、暴れ回るエルカを止めたのがフローの歌。
滅びの剣を求めてルトフの里を焼き払うダナトリアは、ダイとフローの故郷を奪った人で、ダイは強い憎しみと滅びの剣を抱えてダナトリアの元へ向かう。
だけど滅びの剣は、敵味方関係なく、眼に映る全ての人間を殺してしまう。
エルカが最初に剣を手にしてしまったとき、それがいかに恐ろしいものかをダイは知ったはずなのに、分かっているはずなのに、ダイはその剣を持ってしまう…
目の前で家族が無残に殺されていったあのとき、小さかったダイには何もできなかったけど、フローと共に強く逞しく大きくなった今のダイにはできることがある。滅びの剣を持てば、家族を殺して次は自分を救ってくれたルトフの里までも滅ぼそうとしているダナトリアを殺すことができる。そうしてダイは勢いよく剣を手にして走り出した。
剣を持ってからのダイは別人で、さっきまで一緒に歌って笑っていた里の仲間を次々と斬り殺してしまう。その姿は狂っていて、でもどこか切なくて、その表情を思い出すだけで息が止まりそうになる。
目もクワァっとして、動きもまさに獣で、不敵な笑みを浮かべるダイは本当に怖かった。特に一幕の最後のほうでワイヤーで上に吊られていくときのダイはもう豹変していて狂気的な殺気を感じた。
だけど完全に黒い獣に取り憑かれた訳ではなくて、その中に存在する本来のダイが黒い獣と葛藤しているのもすごく分かった。
仲間が近づくと、来ないで…!と制御しようとするダイもいて、狂気的な笑みをしたかと思えば、不意に悲しみで溢れた表情になったり、今自分でしていることを止めたいけれどできない、誰か俺を止めてくれ…!というような苦しみと悔しさが伝わってきた。
そんな難しい二面性をどちらも絶妙に出していて、ダイの心情をしっかり伝えることのできる大橋和也の演技力と表現力にはあっぱれ。
この凄さに見合う言葉が思い浮かばないほど。やっぱり大橋和也は天才です。
あとダイの中での葛藤を黒い獣とダイが闘っているシーンで描いた場面もあって、スクリーンを使って影絵の要領で魅せていたのがすごかった。
影絵の上からプロジェクションマッピングで歌詞なども映していて、それと合わせた動きをしたりしていた。
そして人を無差別に斬り殺すダイを見たフローは、殺すしか止める方法はないと知り、「もしダイが道を誤ったら、身を呈してでも救う。」という約束を胸に、ダイを殺すことを決心。
このとき、後ろのプロジェクションマッピングでダイとフローが影で出てきて、あの約束を交わしたシーンが回想として映された。
それがダイのためでフローはそういう使命なのだとしても、戦争孤児でお互いが唯一の家族のような存在で、助け合って生きてきたダイを殺すなんてすごい決断だな…と衝撃。
ダイとフローは故郷ではないルトフの里に引き取られて暮らしていたけど、きっとどこかまだ里の人を他人だと思っていて2人だけが見せ合う本当の素はあんまり出さなかったんじゃないかな…。幼い頃の戦争の苦しい思い出は基本里のみんなには話さないし、里のみんなと家族のような関係なんだけど、やっぱりどこか違う立場にいる。
だからこそ2人はお互いを支えにしていたし、人生において一番大事な存在がお互いだったんだろうな。とんでもなく強い絆と愛を感じて痺れが止まらなかった。
フローって優しくて天使のようだけど、本当は誰よりも強い人なんだなぁ。
「ダイを救う」っていうことだけを考えていて覚悟が全くブレない。自分がどれだけ犠牲になろうとも躊躇なんて一切しない。フローにとってダイはこの世の全てのものの中で一番大事で、ダイのためだったら何でもするから。
ただフローは、ダイのことだけを考えているん。
そしてダイはフローのことを一番信頼していて、何かあったら救ってくれるっていう約束を必ず果たしに来てくれると分かってる。
そしてフローはエルカとファンルンと旅に出る。ダイを殺すために、ダイを救うために。
そこで一幕は終了。
二幕の最初は、滅びの剣に勝てるドルデンの魔剣を製造する島。
そこに着いたフローエルカファンルンは、その魔剣を求めて探す。しかしその剣を持っていたのは、あのダナトリア。
ダナトリアは剣の斬れ味を確かめるためだけに、人を使って試し斬りをしていた。その島の人たちは奴隷のようなもので、試し斬りをして腕や脚を失っていく代わりにお金を貰ってなんとか生活をしていた。
この島はずっと雨が止まなくて(プロジェクションマッピングや音で演出する雨がすごかった)、それは島の奴隷たちの人生への絶望とか永遠に終わらない恐怖を表現していたのかなぁ。
島のある親子もそういう生活をしていて、父は腕一本、脚一本をもう既に失っていたので遂に娘を差し出してしまう。だけど娘は逃げて、父が代わりに斬られると決めた。
「まだもう一本の腕と脚が残っているから大丈夫だよ」「痛くないさ」みたいなことを言っていて、もうなんて残酷で苦しくて、でもどうしようもない虚しさがあって、胸が痛い。
結局フローがダナトリアがルトフの里を焼き払いに来たとき、ダイの滅びの剣で脚を斬られた代償と、魔剣をダナトリアから譲ってもらうために「試し斬りをする」という条件を呑み、フローが斬られてしまうんだけど、いやいやまさか…フローーー!!!って叫びそうになった。辛すぎるよ。
「右腕右足左腕左脚、どれがいい?」と聞かれ、フローは「歩けなくなると困るから、左腕で」と答える。もちろんエルカも止めるんだけど、「大丈夫」なんて言ってのけちゃう。腕を台の上に固定させられて、ブシュッと。
もちろんその腕を斬るシーンは暗転して見えないけど、斬る音も、フローの叫び声も、リアルで怖くてえぐかった。これは小さい子見れない。
約束の言葉通り、フローは身を呈してでも約束を守る人。きっと腕の一本なんてダイを救うためだったら屁でもないんだろうなあ。
左腕を失い、義手になったフローは魔剣を手にして、再び旅に出る。
この辺りであった、ダイス先生のシーンの演出もすごかったなあ。説明が難しいんだけど、洞窟?かなにかのシーンで、一枚の大きな布を4人が持っていてその布の下を風が通って、布が綺麗に波打つ。前後の2人の動きがピッタリで上手く風を操って、綺麗に布をなびかせて独特な世界観を演出していた。
そしてフローとエルカと一緒に旅をしていたファンルンの裏切り。
フローは拘束されて拷問を受けることに。ムチみたいなのでたくさん殴られて、右耳も斬られる。
ファンルンはフローに滅びの剣を止める歌を歌えと言うけど、フローはお前のためなんかに歌わない!と抵抗し、舌まで斬られてしまう。
そのときの演技がもう圧巻で、口元を抑えもがき苦しんでいるんだけど、目には力強さもあって。フローは負けていなかった。強かった。
それでも私の心の中では、もうこれ以上フローを傷つけないでー!!って泣き叫んでいたくらい、あんまりにも残虐で、息もできないくらい緊迫したシーンだった。
フローは左腕と右耳と舌を失い、話すことも歌うこともできなくなった。
あ、フローの舌は後でつけられて最後らへんはもう全然喋って歌ってたんだけど。(斬った舌をもう一度つけたら治って喋れるようになるんかい!と思うのはファンタジーなので気にしない)
でも逆によく生きてるな?と思うくらい全身ボロボロで、だけど心は最初から全く揺るがない強さがある。それはダイへの揺るがない信頼と愛が強さになっているんだろうな。
そのあとダイと遂に対面。ダイとフローの殺陣は本当にすごかった。
一個一個の細かい動き、剣をぶつける勢い、全てが丈橋の信頼関係があるからできることで、去年よりも関係性が深くなった2人の殺陣は何段もレベルアップしてるはず。
ダンスで培ったしなやかな動きが殺陣をより一層綺麗に魅せてくれるし、一番の見せ場なんじゃないかと思う。
ダイは戦いながらもフローが救いに来てくれたことに感謝していただろうし、心の中では涙を流していたはず。
結果斬られそうになったフローをダイス先生がかばい、ダイはようやく滅びの剣から手を離す。ダイス先生は過去の過ちに型をつけたいと思ったのもあるけど、ダイとフローを守りたかったっていう素直な思いと、フローにダイを殺させたくないという思いもあったと思う。
フローはダイを殺さず、2人とも死なずに済んだ。まぁハッピーエンドっちゃハッピーエンドだけど、そんな単純なものでもないんだなあ。
ダイは黒い獣に取り憑かれていたとは言え、ルトフの里の大切な仲間を斬り殺してしまった訳で、どうしようもない過ちを犯してしまった。
それでダイはダイス先生の杖を持って旅に出ることに。「傷つけてしまった人があまりにも多すぎて」という後悔の中にも、旅に出るダイの表情は力強くて未来への強い希望も持ち合わせていたように思う。
まぁあれだけ殺しといてのこのこ里に帰れないわな!とは思ったけど、里に戻ったフローとエルカと里のみんなは、ボロボロになったルトフの里を立て直してダイの帰りを待つんです。
自分の家族を殺したダイでもまたあたたかく受け入れようとする里の仲間たちは、ダイを心の底から家族だと思っているからなのかな。
ダイとフローも本当の兄弟でも家族でもなんでもないけど、そこには何にも負けない絆がある。
実際の関係なんてどうでも良くて、同じ里出身じゃなくたって、支え合って強くなって生きていけばそれはもう家族なんじゃないかなぁ。と思わされた。
ダイとフローが5歳の時、家族も仲間も何もかも奪われてルトフの里にやってきたとき、里のみんなは2人をみんなの家族として受け入れたんだろうな。
全てを失って心閉ざす小さな男の子2人が、あれだけ強く逞しく、愛に溢れた青年になったのは、たくさんの愛情と優しさを持って育ててくれた里のみんながいたから。
2人はそれをちゃんと分かっていて、貰った以上の愛を返していただろうし、だからこそそんな大切な人たちを自分の手で殺めてしまったダイの気持ちを考えるとどうしようもなく切ない。
ダイとフローと仲良しなエルカも本当に強い人だなぁと思う。
自由奔放でおてんばで、3人の中で末っ子みたいなところがあるけど、2人の気持ちをいつも察していて実は一番お姉さんなのかなって。たぶん小さい頃からダイとフローのことを守ってくれていたんだろうな。
滅びの剣を蘇らせてしまったのはエルカだし、その後悔と責任をすごく感じているんだろうな。自分のせいでダイは変わってしまって、里のみんなも失って、本当は辛くて辛くて死んでしまいたいくらいだと思うのに、ボロボロになっても戦い続けるフローの隣で涙は見せず、まっすぐ前だけを向いてきた。
ただのヒロインじゃなくて、ひとりの戦士みたいに強くてかっこいい子。
一方で、ダイはある意味で弱いのかなと思った。フローとエルカは強い芯を持っているけど、ダイはどちらかというと本能のまま、滅びの剣を手にしてしまって仲間も殺してしまった訳で。
剣を持ったのはルトフの里を守るためという意味もあったし、逆にダイが滅びの剣を持ってダナトリアに向かっていなければルトフの里はダイとフローの故郷と同じ結末を迎えていたはずだから良いとも悪いとも言えないけど。
同じ境遇なのにフローは憎しみとか復讐とかよりもダイを守りたいという気持ちが強くて、そこはキャラクターの違いだなぁと。
ダイとフローの対比はずっとされていて、ダイが「陽」でフローが「隠」のときもあるし、その逆のときもある気がする。多分それは観る人それぞれの感じ方によって違うだろうし、それこそがリューンの魅力なのかな。
斬り落としたり、目を背けたくなるほど残酷なシーンもたくさんあったけど、その根底には人のあたたかさや信じる気持ちがあった。
リューンのあの世界に、私はまた行きたいと強く強く思う。再再演を願っているし、今回再演が決まったように自分からも働きかけたい。
ゆくゆくは滝沢歌舞伎みたいに映像化もしてほしい……
本当にまとまりのない文章で長ったらしく語ってしまった〜
だけどこれでもまだまだ言い足りなくて、それくらいこのミュージカルは私の中で衝撃作でずっと心の中に残り続けると思う。
またルトフの里で、3つのかまど亭で、澄んだ風と軽快な音楽を楽しみたいなぁ。再再演が決まると信じて、またリューンの世界に行けると信じて、それまで余韻に浸っていよう。